kiitokがハイクラスエンジニアにオススメしたい企業を紹介する「kiitokレビュー」
今回は、病院向けに特化したSaaS事業を展開する「MedUp」(以下メダップ)を紹介します。
メダップは、町の診療所ではなく、一定規模がある病院(*1)を対象に、Verticalに複数のSaaSを展開を予定しているスタートアップです。
その第1弾の事業として、現在は、病院向けのCRMサービスを提供しています。
医療というレガシー且つ社会的意義が大きい巨大市場において、事業家目線で大きな裁量を持ってプロダクトをリードできる環境が魅力的です。
では、メダップの事業と開発体制、開発文化、ポジションや成長機会について解説していきます。
*1 医療法では、病床数20以上が「病院」、19以下は「診療所」と定義
今回お話を伺ったのは

メダップ株式会社
代表取締役
柳内 健さん
ITコンサルベンチャーのエイムネクストにて、Infor社の製造業向けERPシステム の導入プロジェクトに2年半従事。移行用システムの設計・実装(C#)やSQLを用いたデータ分析・改善提案を行う。その後、モバイル・インターネットキャピタルにてベンチャー投資・支援を6年半実行。投資部門共同リーダーとして、70億円のファンドを運用し、国内外のSaaSや医療分野を含む既存産業変革化を目指すベンチャーを中心に担当。医療分野の非効率性を知っており、知見のあるSaaSやIoTサービス等で効率化できると考え2017年にメダップを起業

メダップ株式会社
技術顧問
高丸 翔英さん
楽天にて6年間、エンジニアリングに従事。2014年よりピースオブケイクに参画。「note」の立ち上げに従事しリリース1ヶ月で100万UU・2000万PVを達成する。リクルートライフスタイルにてサロン予約サイト「ホットペッパービューティー」のテックリードを担当。2016年より(株)crispyを共同創業し、CTOとして「HEIM」を立ち上げる。2018年技術顧問としてメダップ参画。
今回インタビューに答えて頂いたのは代表取締役の柳内さんと技術顧問の高丸さんです。
インタビューはkiitok運営の株式会社トラックレコードCTOの上原が担当しました。
まずは会社とプロダクトについて紹介
会社の歴史とプロダクト、実績や今後の展開などについて紹介していきます。
1年以上のPoCを経て2019年にプロダクトリリース

2017年に創業したメダップ。多様な役割・規模の病院の、様々な職種・業務の課題を解決することを目指すVertical SaaSのスタートアップです。具体的には下記の3つのステップで業界をアップデートすることを狙っています。
ステップ1. トップ病院と共同開発することで、病院業界のベンチマーク足りうるオペレーションを構築し、それをSaaSに落とし込む
ステップ2. SaaS+サポートにより、ベンチマークに近いハイレベルなオペレーションを、色々な病院にインストールし、多数の病院の課題を、一気に解決 & 強み足りうるレベルまで引き上げる
ステップ3. それを現在提供する、CRM以外の領域でもSaaSを展開し、医療をアップデートする。
「病院経営力ランキング」で1位になったこともある「済生会熊本病院」への1年以上かけたPoCによって、サービスの有効性を確認し、昨年スモールなプロダクトをリリースしました。
現状は、ステップ2の途中。顧客企業の拡大や既存顧客へのカスタマーサポートの充実に加え、より多くの病院のオペレーションをトップ企業・病院のレベルに高めるべく、大幅な機能追加を予定しています。
2020年には1億円規模の資金調達も実施。顧客の経営層や現場から寄せられる多様な要望に答えるべく、並行して新規SaaSの開発にも取り組んでいます。
圧倒的な巨大マーケットの病院市場

医療市場は、自動車や不動産などについで、国内でも4番目に大きな巨大市場です。また医療費の約半分が、病院での医療となっています。
我々が風邪などにかかった際にお世話になる町の病院(=診療所)と比べても、病院での医療はその2倍以上の規模感となっています。
病院が抱える構造的課題

医療業界の大きな課題として、高齢化などの要因により医療費の大幅な増加が見込まれており、持続が難しい仕組みになっています。
この解決策として、政府は医療機能の分化・連携を推進しています。
医療の機能の分化とは?
噛み砕いて表現すると「患者と医療のマッチングの最適化」です。例えば症状次第では入院ではなく、自宅療養と診察医療で対応することができます。また病状によっては、病院での入院ではなくリハビリが適切なケースもあります。
また入院や手術が必要なケースでも、その患者の症状にあわせて最適な病院で治療をすることでなどを指します。結果として、その病院のスキル向上や医療機器の調達コストの削減などが実現できます。
結果的に、必要な人に必要な治療を行うことで、医療費の削減に繋がります。
しかし、この医療機能分化により病院の特徴が多様化し、地域の診療所が病院の特徴を把握しきれず、適切な「患者紹介」が実行できないという新たな課題が発生しています。
診療所から病院への「患者紹介」の理想

前提として、病院の患者の受け入れは「救急車による搬送」か「診療所からの紹介」によって成り立っています。
しかし、「診療所からの紹介」については、前述の通り医療機能分化が推進される中で、診療所が適切な紹介先の病院に関する情報を把握できておらず、患者さんに必ずしも適切な医療が提供されていないという課題が生まれています。
病院・診療所間の情報格差を解消していくためには、この図にあるように、病院から診療所への説明が必要となりますが、現状はそれが十分に行われていません。
つまり、一般的なビジネス用語に転換するならば、診療所向けのセールス・マーケティング活動が不足しているということです。
デジタル化できていない病院

病院から診療所へのセールス・マーケティング活動の実態としては、年に1回程度の訪問や講演などが行われていますが、戦略的な施策の実施やデータの取得、またそれを元にしたPDCAサイクルなどはほとんど回せていないのが現状です。
例えば診療所単位での紹介実績を分析した上で、診療所別にセールス・マーケティングプランを実行することは十分に行われていません。
また病院のオペレーションは、TEL/FAXなどのレガシーなコミュニケーションが依然としてメインで、患者の情報や診療データも一元的に管理されておらず、非効率な運営がなされています。
このように、企業では一般的といえるような情報管理、マーケティングとは大きく乖離しているのが病院の実態です。
メダップが提供する中・大規模病院に特化したCRMツール

診療所単位でのコンタクト情報の一元管理、施策の結果分析などに加えて、地域内での多数の診療所との関係をひと目で把握するための地図分析などを実現する「foro CRM」を提供しています。
これによって、病院から診療所へのセールス・マーケティング活動をより効率化し、最大化することができるようになっています。
このように病院の医療設備や医療実績等が正しく地域診療所に周知されることによって、診療所を訪れる患者に対して、最適な紹介先が提案されるという価値が生まれます。

著名病院でのPoCによる成果

「病院経営力ランキング」で1位になるなど、国内のオピニオンリーダー的存在でもある「済生会熊本病院」にて、1年にわたるPoCを経ている点も興味深いです。
本病院でのCRMツール提供や各種分析、それを元にした施策立案・実行などをハンズオンでサポートした結果を基にして、サービスの有効性を確認しています。
病院に特化した複数のSaaSを立ちあげる

まずは現在提供している「foro CRM」の機能拡充やセールスなどによって、CRM領域の成長を目指します。
具体的な機能としては、タスク管理やチャット機能などがあり、ワンストップで業務が行えるサービスへと大幅な機能拡大を予定しています。また新規サービスとして、外来診療などのオンライン予約などのツール提供なども検討しています。
さらに、病院内では、人事や経営、情報管理などをはじめ非効率な領域が多数存在しています。それらの領域にSaaSモデルでのサービス立ち上げを検討するなど、病院領域に特化したスタートアップスタジオのように複数の事業展開を予定しています。
review

kiitok
上原
今後様々な医療ドメインにおける複数のSaaSプロダクトの開発を想定しており、技術のみではなく積極的なプロダクトへのコミットも求められていることもあるので、事業家志向のエンジニアにとってはチャレンジの幅が大きい。

メダップ
柳内さん
このような大きな課題がありながら他プレイヤーが少ない理由は、非常に高いエントリーハードルにあります。
メダップはエンジニア・コンサル・VCでのSaaS投資経験のあるCEO、BCGで営業コンセルティング経験のあるカスタマーサクセス責任者、元キーエンスのSales Mgr、病院での連携の元エース人材など、病院における現状の実務理解・一般企業の先進事例理解・抽象化やSaaSツールへの落とし込みが可能な非常に強いチームが特徴です。
加えて我々は国内有数の病院との取引関係があり、これをベースにしてプロダクトもセールスもさらに拡張していける点も強みだと考えています。
次はプロダクトをつくっている開発チームを紹介
開発体制、開発文化や今後のチャレンジなどについて紹介していきます。
開発体制と技術スタック

現在利用している技術スタックは以下の通りで、サーバサイドはプロトタイプベースの開発だったためにRailsを採用、インフラはherokuなどのPaaS含め様々な選択肢があるなかで、拡張性を考慮しGCP(Google App Engineのフレキシブル環境)を選択しています。
将来的には、Goやnode.jsなども適切な場面で導入していきたいと考えています。
サーバーサイドは Ruby, Ruby on Rails
フロントエンドは Vue.js
インフラは GCP (Google App Engine), AWS
スピード感を持ったアップデートサイクルを実現

CEO柳内さんがPO、技術顧問高丸さんがスクラムマスターとして、一週間スプリントのスクラム開発に取り組んでいます。
CircleCIを利用したCI/CD環境を構築しており、デプロイはほぼ毎日行うなど、スピード感を持ったアップデートサイクルを実現しています。
また開発の意思決定は、スクラムに参加しているメンバーによる週に1度の優先度決めMTGに加え、3ヶ月に一度ロードマップの議論を全社員参加のオフサイトMTGで行うなど、スピード感と全体の合意形成のバランスをもって取り組んでいる印象です。
【補足】
- 開発フロー : 1週間スプリントのスクラム開発(最近、本格化)
- テスト : 重要な部分に絞って実行している
- CI/CD環境 : CircleCIでAppEngineのDeployまで完結
- コードレビュー : 高丸さんがしっかりとレビューを行う
- 企画決定フロー : PO柳内さんをメインにして意思決定
- 技術的負債対応 : 細かいものはあるものの、大きな負債はできないようレビューで担保
「スピードを優先したからといって質を落としたくない」

まだまだ小さい開発チームという点からも、開発チーム特有の文化や仕組みなどはこれからつくっていくフェーズです。
しかしながら、技術顧問である高丸さんの「スピードを優先したからといって質を落としたくない」という考えもあり、スピードだけではなくメンテナンス性もしっかり考慮した開発環境になっている点は好印象です。
また、今後複数のSaaSを立ち上げるという事業戦略もあり、新しいサービス立ち上げが生まれる環境にあります。
代表である柳内さんの「若い人にチャンスを積極的に与えていき、早期にCEOを含む現経営メンバーより優秀になってもらう」という考えもあり、大きな裁量をもって、プロダクトの立ち上げ、技術選定などに関わる機会が得られる環境となっています。
小さいチームである点や、代表の組織づくりの考えからも、プロダクトや事業の立ち上げなどの責任ある役割を裁量もって任せてもらえる文化と環境がある組織です。
またインセンティブの面でも、入社時、昇給時のS.O付与制度が整備されています。他にも、会社ステージと職位別の報酬制度を現時点でも整備・公開しており、今後拡大することも踏まえて組織づくりに手をつけているのも印象的です。
顧客のフィードバックを強く重視する
1年にわたるPoCなどの取り組みもその一つの代表例ですが、メダップでは顧客からのフィードバックを集め、それを基にプロダクト開発に活かしています。
他にも顧客とのミーティング内で、定期的にプロダクトについて議論する時間を設けるなどの施策により、顧客からのフィードバックをプロダクトの改善に活かしています。
また顧客と接点をもつ事業開発やCS部門のメンバーには元IBM、元BCGなどのポテンシャル高いメンバーがアサインされており、質の高いアウトプットとインプットのサイクルをまわしています。

review

kiitok
上原
また裁量が大きく、技術選定はもちろん、プロダクトの意思決定に関しても積極的にコミットを求められるのはプロダクト志向のエンジニアには非常に魅力的です。
今後、数多くのSaaSプロダクトを展開しようとしており、アーキテクト観点でも設計におけるチャレンジの幅も非常に大きい。

メダップ
高丸さん
また柳内さんから、なにかを「だめ」と言われたことがない。柳内さん自身が、自分自身の技術知識がキャップになってはいけないという危機感もあるため、高い技術力をもったエンジニアの主体的な問題解決を強く歓迎しており、このような積極的にチャレンジできる環境は魅力的だと思います。
また、2016年よりRuby on Railsをメインにフリーランスとして活動され、2019年よりメダップの開発に従事しているリードエンジニアの長谷川さんから、「チームとして中長期的な視点を持って開発に取り組めているので、負の遺産が残りづらく、そういう意味ですごく働きやすい環境」とコメントももらっています。
最後に、今もとめるポジションと成長機会を紹介
記載時点(20年5月)で募集中のポジションと期待値やそこで得られる機会について
いま求めているのは、このポジション

まずはプロダクト開発を推進できるエンジニアのフルコミットメンバーを強く募集しています。エキスパート人材もWelcomeですが、複数のSaaSプロダクトを展開していく戦略上、プロダクト志向の強いエンジニアはよりフィット感が高い印象です。
直近ではチャット機能開発や、診療予約機能開発などが開発issueで、既存のCRMの上につくるか、新規でつくるかなど、設計の余白も大きい。
またCTO候補やVPoE候補、テックリード候補と呼ばれるような、将来的にチームやプロダクトをリードできるメンバーも求めています。思想としては、肩書やポジションに憧れるメンバーではなく、大きな責任をもとにチャレンジをしたいエンジニアを歓迎しています。
得られる成長機会は

今後複数のSaaSプロダクトをリリースしていこうとする中で、複数のゼロイチ経験、またそれに伴う技術選定の機会や全体としての技術の標準化、基盤作成など、技術的チャレンジの幅も広く、エンジニアとしての経験値を積める機会があります。
また、技術面は、SaaSとしての設計(マルチテナントなど)はもちろん、複数のSaaSプロダクトを開発していく上での全体設計(マイクロサービスなども開発体制の拡充に合わせて導入を検討)や基盤整理等、アーキテクトとしての検討などもチャレンジングなテーマです。
最後に、エンジニアとしてのキャリアだけではなく、新規ビジネスの事業責任者や社内CTOのようなポジションも会社として設計しています。事業志向、プロダクト志向のエンジニアにとっては技術だけではない成長の余白がある点も魅力的です。ビジネス側のキャリアパスでは、各メンバーが大きく成長し、新規事業の責任者になることを期待しています。

一緒に働きたい人は

現時点では一定レベル以上の即戦力なエンジニアを求めています。
スタンスとしては技術志向の方よりは、顧客志向、プロダクト志向のあるエンジニアがフィット感があります。
また自律、自走ができ、自分で意思決定をできる人材を求めています。

review

kiitok
上原
与えられる裁量もかなり大きく、テックリードとして一定技術的にやりきっており、今後ビジネス側にシフトしたいような人にもおすすめです。

メダップ
柳内さん
そこで新規プロダクト立ち上げ、事業成長などを自身がオーナーシップをもって牽引できる環境がある点が、将来的に事業をたちあげたい意欲のあるエンジニアの方には魅力的かと思います。
他にもこんなことを聞きました。
質問の一例
- 海外のベンチマークの話
- 今後の事業展開の話
- 給与や報酬面の話
などなど。「もうちょっと話を聞いてみたい」と思った方は、kiitokに登録を。kiitok担当アドバイザーが記事では紹介していない情報も含めてご紹介します。
kiitok review インタビュアー

株式会社トラックレコード CTO
上原 将之
京都大学経済学部卒業後、2010年にDeNAに入社。エブリスタ、MYCODE、歩いてオトク、AI創薬プロジェクトなど、様々な新規サービスの立ち上げや開発・運用に携わる。 サーバー、クライアント、iOS・Android、機械学習等、幅広い技術スタックでの開発を経験する。 その後フリーランスエンジニアを経て、kiitokを運営する株式会社トラックレコードを創業。