kiitokがハイクラスエンジニアにオススメしたい企業を紹介する「kiitokレビュー」
今回は、薬に替わる治療方法として注目される治療用アプリと薬の臨床試験を効率化するシステムを提供するスタートアップ「SUSMED」(以下、サスメド)を紹介します。
サスメドは、国の財政へ大きな負担をもたらしている社会保障費の中でも、非常に大きな割合を占める「薬」に着目。薬による「治療」自体をデジタル化することによる社会保障費の削減、また薬自体の開発コストを下げることに繋がる臨床試験の効率化を、テクノロジーの力で支援しています。高い品質や堅牢性、専門性までが求められる治療のデジタル化を牽引する国内でも類を見ないスタートアップです。
圧倒的な堅牢性と品質でエンジニアがダイレクトに医療にインパクトを与えられる会社「サスメド」の事業と開発体制、開発文化、ポジションや成長機会について解説していきます。
今回お話を伺ったのは

サスメド株式会社
CTO
本橋 智光さん
SIerの研究員、Web系企業の分析者を経て現職。 基盤・スマホアプリ・フロント・サーバ・機械学習・数理最適化等幅広くこなす。 個人として量子アニーリングコンピュータの応用研究にも従事し、 IPA 未踏ターゲットにも関わる。システム制御情報学会奨励賞、KDD Cup2015 2ndなど受賞。 著書に「前処理大全」(技術評論社)、「機械学習のための特徴量エンジニアリング」 (O‘Reilly Japan)など。 日本情報システムユーザー協会や日経セミナーなどで講演多数。
インタビューはkiitok運営の株式会社トラックレコードCTOの上原が担当しました。
まずは会社とプロダクトについて紹介
会社の歴史とプロダクト、実績や今後の展開などについて紹介していきます。
SUSMED株式会社
売上:非公開
社員数:22名
所在地:東京都中央区日本橋本町三丁目8番5号 日本橋本町三丁目ビル 5階
URL:https://www.susmed.co.jp/
2015年設立。累計20億円調達済みのスタートアップ

サスメドは2015年に設立し、シード期に1億円の資金調達を受け不眠症の治療用アプリの臨床試験を開始しています。その後、累計20億円以上の資金調達を経て、現在は不眠症以外の治療用アプリ開発や、医薬品開発プロセスの一つである臨床試験を効率化する事業を展開しています。
出資先には、大手の製薬会社、製薬卸、保険会社などの事業面でのシナジーもあるパートナーが揃っています。
社会保障費の20%弱を占める「薬」に向き合うスタートアップ

サスメドは、高齢化などの要因により増え続ける社会保障費の中でも薬の問題に向き合っています。図のように日本の医療費は高齢化と医療の高度化により年々増加しています。特にその20%弱を薬剤費が占めています。
一方で例えば、薬の投与量を減らすなどの選択肢をとればコスト削減につながるかもしれませんが、最適な医療介護を受けられない可能性にもつながり、安心して暮らせる社会とは言えません。
サスメドはこのような社会課題に対して、2つのアプローチで問題解決に挑戦しています。一つはフィジカルな薬(一般に処方される医薬品)ではなく、デジタルな薬=治療用アプリの開発。もう一つは、医薬品開発に関わるコストを削減することで、薬剤自体のコストを下げる方法です。
どちらも、最適な医療介護を提供し安心して暮らせる社会を実現しつつ、医療費の低減に取り組める方法です。このようなサステイナブルな医療環境の構築を目指すことが社名である「SUSMED(SUStainable MEDicine)」の由来となっています。
参考記事
「高額化する薬剤費、一人ひとりに出来ることとは?」
https://www.asahi.com/articles/SDI201906052111.html
「治療のデジタル化」をサポートする2つの事業を展開

サスメドはブロックチェーン、AIなどの技術的基盤を活かして (1)治療用アプリの開発(自社開発製品・共同開発製品)、 (2)製薬会社向けの臨床試験用システム を提供しています。
(1)治療用アプリの一つとして不眠症治療用アプリがあります。
不眠症治療用アプリは、認知と行動を整えることで症状の改善を図る「認知行動療法」をスマホ上のアプリで提供するものです。患者が自身の状態や行動を入力することで、それに応じた認知や行動を整えるガイダンスが提供されます。
認知行動療法を行うことの有効性はすでに医療現場でも理解されていますが、現在は、医者が対面で数十分かけて一人ひとりに診察や治療を行うことが求められるなど、非常に労力のかかる療法となってしまっており、なかなか現場では実行に移せないという事情がありました。
サスメドは、認知行動療法のプロセスをアルゴリズム化し、スマホアプリを介した治療として提供することで、この治療法をより多くの人に効率的に提供することを実現していきます。
また、自社開発の不眠症治療用アプリ以外でも、製薬会社やアカデミアなどと共同でのアプリ開発を進めています。
参考記事
「黎明期に入った治療用アプリ、1兆円市場はいつ?」
https://newswitch.jp/p/20323
「アプリを治療薬に「デジタル療法」期待、開業医48%、勤務医65.8%」
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/707352/
(2)臨床試験システムとは、誰にどの薬をどの程度服用してもらい、どのような症状になっているかなどの薬の臨床試験に必要なデータを一元管理するシステムです。
一般的に臨床試験には数億円以上のコストがかかっており、それが薬の高価格化にも影響した結果として社会保障費の増加につながっています。特に臨床試験の外部委託費においてはモニタリングといわれる業務のコストがその内訳の多くを占めると言われています。
そこで、これまで紙などで行なっていたアナログな作業を置き換えるために、患者さん向けのスマホアプリ、製薬企業向けの管理画面、また実薬とプラセボ(偽薬)との割付システムなど、臨床試験で必要となる様々な機能を提供できるシステムを一式で提供しています。
またブロックチェーン技術を用いることで、改ざん防止を目的として煩雑になってしまっているオペレーションの負荷軽減にも取り組んでいます。
↓臨床試験システムの参考データ↓

【実績1】不眠症治療用アプリは臨床試験フェーズに
現在は臨床試験フェーズとなり、近い将来に医療機器としての認可を取得し、医師が患者さんに処方できるようにする計画です。
不眠症で悩まれている患者さんから直接サスメドに問い合わせが来ることも有り、専門医だけではなく一般の患者さんからも高い期待を集めています。
参考記事
「医学的エビデンスに基づき、スマートフォンアプリで不眠症治療を実現―サスメド」
https://astavision.com/contents/interview/4085
【実績2】国立がん研究センターと共同での臨床試験

サスメドの提供する臨床試験システムの実績としては、内閣府の規制のサンドボックス制度において、国立がん研究センターと共同で「ブロックチェーン技術を実装した臨床試験システム」の実証試験を行い、臨床試験の「モニタリング」を代替可能なシステムとして、厚生労働大臣及び経済産業大臣から認可を受けるなどの成果をあげています。
この認可によって、臨床試験の中でも大きなコストがかかっている「モニタリング」に関して、デジタル化によるコスト効率化が実現できるシステムを製薬メーカー等に今後提供していくことが可能になりました。
参考記事
「ブロックチェーンで臨床データをモニタリング―サスメド、ITで変える臨床試験の未来」
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/16198/
医療系出身者、研究畑出身者の研究開発型のチーム

サスメドのメンバーは、医師・医学博士、研究者、ファンド出身者などの多様なメンバーで構成されています。代表の上野氏と取締役の市川氏は両名とも医師、医学博士。またCTOの本橋氏も研究者として実績をもっており、研究開発に強いメンバーが揃っています。
実際に、特許や学会発表、論文発表実績も多く、確かなエビデンスに基づいたサービスを提供するチームであることが、企業としての優位性を高める材料となっています。
↓特許や学会発表の実績↓

海外では急成長中の治療用アプリ市場

治療用アプリ市場は米国で先行しており、これから急成長が期待されている市場です。
具体的には、糖尿病、ニコチン依存症、アルコール依存症、うつ病などの疾患への提供がすすめられています。
先駆者として注目されている糖尿病治療用アプリ「BlueStar®」を提供するWelldoc社は、昨年国内大手のアステラス製薬との提携を発表しました。米国内にとどまらず日本国内、アジア市場向けの展開をするなど、グローバルでの可能性があるサービスという点もこの市場の魅力です。
治療データ蓄積によるデジタル治療を新しいステージに

サスメドの戦略としては、技術基盤を活かして治療用アプリの自社開発や共同開発を進めていく方針です。また臨床試験用システムの拡張などを中心に事業を拡大していきます。
様々な治療プロセスや製薬プロセスへ関わることで、結果として、症状と治療に関わるデータを蓄積する事ができ、そのデータの定期的な観測によって、病気の早期発見と早期治療ができるようになることを期待しています。例えばアルツハイマーなどは早期発見と早期介入が症状の進行速度を抑えることにつながることがわかっており、デジタル治療が浸透することで症状の早期発見を実現できます。
サスメドは、このようなデジタル治療の基盤を提供することで、社会保障費の削減や安心な医療環境の提供の実現を目指しています。
review

kiitok
上原
また臨床試験システムでは、国立がん研究センターなどと共同でプロジェクトを進めており、ブロックチェーン技術を用いた臨床試験の効率化手法が国に認められるなど技術的に高度な環境である点も魅力的です。

サスメド
本橋さん
また医療系のシステムということもあり、品質の高さが価値となります。つまり高い技術力が過剰品質とならず正当に認められる環境も、エンジニアとしては「腕を発揮できる場所」として魅力的です。
次はプロダクトをつくっている開発チームを紹介
開発体制、開発文化や今後のチャレンジなどについて紹介していきます。
開発チームの体制や技術スタック

エンジニア7名、デザイナー2名、平均年齢は35歳でスタートアップとしては経験豊富なシニアで専門性の高いメンバーが揃っています。
また上記にあるように複数のプロダクトを持っていますが、現在は臨床試験システムの開発に集中して開発を進めています。
技術スタック
アプリはAndroidはKotlin , iOSはSwift。フロントエンドはTypeScript / Vue.js、サーバーサイドはメインがPython / FastAPI, ブロックチェーン部分についてはNode.js(Hyperledger Fabric)、一部Golangなども利用しています。
インフラはAWSメインですべてCodeBuildで完結しているのが特徴的です。またサーバレス&フルマネージドサービスを積極的に活用し、安定性や堅牢性を重視しつつもモダンな技術を積極的に取り入れている点もユニークです。
開発フロー

品質や堅牢性を担保するためにウォーターフォールでの開発が中心です。またテストコードは必須で、検証フェーズも単体、結合、シナリオテストの3段階をしっかり期間をとって行います。
プロジェクトの進め方は基本的にエンジニアが主導となり、ドメインエキスパート(国立がん研究センターの医師など)と直接対話しながら要件を決定していき、エンジニアの裁量が非常に大きいのが特徴的です。
開発スタイル: 品質担保のためのウォータフォール型
テスト実施: テストコードは必須
CI / CD環境: GitHub ActionsによるCI、AWS CodeBuildによる自動化
コードレビュー: 1人以上のレビューを必須、自動Lintなども
企画決定フロー: ドメインエキスパートと直接対話しつつ要件を決めていく
技術的負債対応: そもそも発生させないように十分に設計を行う
堅牢性や品質を重視し、バグが0のプロダクトも。

医療情報を扱う特性上、堅牢性や品質を非常に重視しており、開発を行う上でも高いクオリティのアウトプットを求められます。
これを端的に表すエピソードとしては、臨床試験システムについては現状バグ0件、国立がん研究センターとの共同プロジェクトにおいてはリリースしたものを一度も再リリースしていないという完成度の高さを実現しています。
またAWSの障害が発生しても一度もサービスを落としたことがない等、技術力の高さや品質に対する強いこだわりと実績があります。
他にもブロックチェーン技術を用いた臨床試験の効率化やAutoML(自動機械学習)による分析効率化の技術やサービス開発への挑戦を行っており、技術者としても非常にチャレンジングです。
同社でのエンジニアの評価は、品質高く、正しくエンジニアリングをすることが評価される環境のため、技術志向のエンジニアにはオススメです。
↓ブロックチェーン、AutoMLなどの先進的な領域にも積極的↓

シニアで経験豊富なメンバーが集う
CTOの本橋さんは、システムインテグレータの研究員・コンサル、Web系企業の分析者を経て、基盤・スマホアプリ・フロント・サーバ・機械学習・数理最適化等フルスタックに開発をこなす一方、個人として 量子アニーリングコンピュータの応用研究にも従事し、IPA 未踏ターゲットにも関わったり、著書や講演なども行うなど高度な専門知識をもっています。
他のメンバーでは、課題の多かった基盤部分を現在の高い堅牢性まで整備し、開発全般を担当している平野さん、Bluetooth(ブルートゥース)に非常に詳しくアプリのUXを劇的に向上させた高城さんなど、シニアでハイレベルなエンジニアが多いのも魅力的です。
エンジニア紹介
平野友信
SIer、Web系企業のエンジニアを経て現職。
インターネット広告やBtoCのWebサービスにおいて、クラウド・オンプレ問わずインフラを中心にサーバサイド開発からビッグデータ基盤構築まで幅広く経験。PB超えのHadoopクラスタの構築運用の経験も持つ。現職ではAWSインフラを中心にWebアプリ開発に携わる。
高城健太郎
Web系企業、医療機器メーカーのエンジニアを経て現職。
医療機器メーカーでは、一部組み込みや医療機器申請の経験などアプリ開発以外の経験も豊富にある。現在はiOS、Androidのネイティブアプリ開発に携わる。
review

kiitok
上原
またウォーターフォール型の開発というと得てして忌避されがちな風潮の昨今ではありますが、安定したプロダクトとしての実績を出しており、プロダクトの性質に合わせて適切に実行することで「堅牢なサービス」を体現できていることに、チームとしての強さを感じます。

サスメド
本橋さん
経営のエンジニア組織に対する信頼感が高く、ロジカルに議論すれば認められ、一度決まったことがひっくり返されるといったこともなく安心して開発に取り組める環境があります。
最後に、いま求めるポジションと成長機会を紹介
記載時点(21年1月)で募集中のポジションと期待値やそこで得られる機会について紹介します。
いま求めているポジション

現在、求めているポジションは、不眠症治療アプリのiOS/ Androidアプリエンジニア、フロントエンドエンジニア、サーバーサイドエンジニアです。
サーバーサイドとフロントエンドは明確にロールを分けてはおらず、どちらかに強みの軸足をおきつつ、両面で一定理解あるエンジニアを歓迎しています。特にフロントエンドのテックリードクラスを募集中です。
ベースとして求めたい要件としては、以下4点を掲げています。
きれいなコードを意識してかける
医療やプロダクトにまつわる複雑な要件を理解できる
ドキュメンテーションをしっかりと行える
セルフマネジメントができ、主体的に問題に対して動いて、きっちりと確実に仕事をする
↓こんな人にオススメ↓
- SIerなどで堅い開発を経験してきて今後も開発を続けたいが、徐々にコーディングできなくなってきている
- プロダクトのコードのクオリティが低くいい加減なテストやリリースフローに振り回されている
- 金融など、セキュリティレベルの高いシステムを作ってきた人で技術に自信ある人
高い技術×重要な社会課題に取り組める希少な環境

サスメドに関わることで得られる経験について説明します。
1. エンジニアが医療に関われる
アプリによる不眠症治療など、技術の力でダイレクトに人の病気や健康に関与することができるのは一般的なヘルスケアアプリでは経験することができない領域です。不眠症以外にも様々な疾患での幅や可能性がある中で、人の命・健康に関われるのは大きな社会的意義がある取り組みと言えます。
2. 必然的にスキルが磨かれる
堅牢で品質の高いプロダクトとするためにきれいなコードを書くことを求められるため、長期の開発に耐えうる設計力やセキュアな開発のための技術力などハイレベルなスキルが必然的に磨かれます。また堅牢性や品質を重視した正しいエンジニアリングがちゃんと評価されるので、これまで実力はあるが評価されていなかった人も高く評価されています。
3. エンジニア主導の要件定義
エンジニアの裁量が非常に大きく、与えられた仕様をただ作るのではなく、自らが主体的にドメインエキスパートと直接対話しながらあるべきアプリケーションの要件をつめていくというのはエンジニアとしては腕の見せどころであり、成長機会も多くなります。
review

kiitok
上原

サスメド
本橋さん
他にもこんなことを聞きました。
質問の一例
- 事業の話
- 技術的チャレンジの話
- 環境・待遇の話
などなど。「もうちょっと話を聞いてみたい」と思った方は、kiitokに登録を。kiitok担当アドバイザーが記事では紹介しきれなかった情報も含めてご紹介します。
kiitok review インタビュアー

株式会社トラックレコード CTO
上原 将之
京都大学経済学部卒業後、2010年にDeNAに入社。エブリスタ、MYCODE、歩いてオトク、AI創薬プロジェクトなど、様々な新規サービスの立ち上げや開発・運用に携わる。 サーバー、クライアント、iOS・Android、機械学習等、幅広い技術スタックでの開発を経験する。 その後フリーランスエンジニアを経て、kiitokを運営する株式会社トラックレコードを創業。